通夜は故人を偲ぶ大切な儀式であり、マナーに沿った装いは遺族への配慮そのものです。本記事では、喪主・遺族と一般参列者で異なる「ふさわしい服装」をわかりやすく整理し、季節や小物の選び方、避けたいNGまで詳しく解説します。急な参列でも迷わない準備のポイントも併せて紹介します。
通夜の服装マナーの基本
通夜は急なお知らせを受け「取り急ぎ駆けつける」場で、告別式より格式のハードルはやや低いとされます。とはいえ、地味で落ち着いた色味・装飾を抑えたデザイン・清潔感というフォーマルの要は外せません。黒を基調とした装いを軸に、宗教や地域の慣習、会場からの案内(平服指定など)があればそれに従いましょう。
基本の考え方は「誠意が伝わる控えめな装い」。喪主・遺族は正喪服(または準喪服)が原則、一般参列者は準喪服〜略喪服の範囲でOKです。迷うときは、黒・無地・光沢控えめ・肌の露出を抑える、の4点に絞って選ぶと外しません。
- 色:黒が基本(濃紺・チャコールは一般参列で可)
- 柄・装飾:無地・装飾控えめ(ラメやブランドロゴは避ける)
- 露出:長めの袖・膝下丈が安心
- 素材:光沢の強い生地は避け、マットな質感を
喪主・遺族の服装
通夜でも喪主・遺族は儀式の中心となる立場のため、正喪服(やむを得ない場合は準喪服)を基本にします。全体を漆黒で統一し、デザインはできるだけシンプルに。小物やヘアメイクも控えめにまとめ、清潔感と落ち着きを優先しましょう。
装いは「目立たない・乱れない・邪魔にならない」が判断基準です。移動や受付応対など動きも多いので、歩きやすい靴や最小限の荷物が収まるバッグなど、機能面も考慮します。
女性(喪主・遺族)の基本
漆黒のワンピースまたはアンサンブル(膝下〜ふくらはぎ丈)に、黒無地のストッキング、光沢のない黒プレーンパンプスを合わせます。アクセサリーは結婚指輪のみ、もしくはパール一連まで。ヘアはまとめるか、落ち着いたダウンスタイルで。
- 丈と露出:膝下丈・胸元の露出を抑えるデザイン
- 素材:マットで透け感の少ない生地
- 小物:黒無地の小型ハンドバッグ(ロゴや金具の主張は控える)
男性(喪主・遺族)の基本
モーニングまたはブラックスーツに白シャツ・黒ネクタイ・黒の紐付き革靴(光沢控えめ)。ベルト・靴下も黒で統一します。ポケットチーフは基本的に不要、着ける場合も白無地で控えめに。
- シャツ:無地の白、レギュラーカラー、ボタンダウンは避ける
- 靴:内羽根式が無難、エナメルは避ける
- 身だしなみ:整髪・ひげ・爪を清潔に
小物・身だしなみ(共通の注意)
腕時計は小ぶりでシンプルなものに限定し、スマートウォッチの通知音は必ず切ります。香水・整髪料の香りは最小限にとどめ、ネイルは落ち着いたトーン(できればクリア)に。コートは会場入口で脱ぎます。
一般参列者の服装
一般参列者は準喪服(ブラックフォーマル)が安心ですが、手元になければダークトーンのビジネススーツやワンピースでも対応可能です。派手な柄や装飾を避け、シャツ・ストッキング・靴・バッグなどの小物でフォーマル感を整えます。
「平服でお越しください」の案内があっても、基本は黒に近い濃色・無地・光沢控えめを維持します。迷ったらブラックフォーマルの水準に寄せておくと間違いがありません。
男性(一般参列)の目安
黒・濃紺・チャコールの無地スーツに白シャツ・黒ネクタイ。靴は黒の紐付き革靴、ベルト・靴下も黒で統一。柄シャツ・カラーシャツ・派手なネクタイ・スニーカーは避けます。
- スーツ:無地または極細の織り柄まで
- ネクタイ:黒無地(光沢控えめ)
- 外套:黒や濃紺のコート、会場で脱ぐ
女性(一般参列)の目安
黒または濃色のワンピース・スーツに黒無地ストッキング、黒のプレーンパンプス。バッグは小型で黒無地、ロゴや金具は控えめ。アクセサリーは基本不要、付けるならパール一連まで。
- 丈:膝下〜ふくらはぎ丈が安心
- 素材:マットで透け感の少ないもの
- 髪型:まとめ髪、または落ち着いたダウンスタイル
子ども・学生の装い
制服がある場合は制服を着用(派手な校章・リボンは外す)。私服の場合は黒・紺・グレーの無地でまとめ、スニーカーは避けます。髪飾りや靴下も黒・白の無地に統一しましょう。
季節ごとの服装ポイント
四季のある日本では、通夜の服装も季節の配慮が必要です。共通するのは「寒暑対策をしつつ、見た目はフォーマルを維持する」こと。防寒・暑さ対策はインナーや素材選びで調整し、表面から見える部分はマナーに沿わせます。
コートやマフラー、日傘など屋外で使うアイテムも、派手な色・柄・大きなロゴを避け、可能な範囲で黒・濃色の無地に寄せるのが無難です。
夏(高温多湿期)の配慮
通気性のよいブラックフォーマルや濃色ワンピースに、薄手の黒ストッキング(15〜20デニール目安)。素足・サンダルは避け、汗染み対策としてインナーや替えのストッキングを携帯すると安心です。
冬(寒冷期)の配慮
黒や濃紺のコートを入口で脱ぐのが基本。毛皮・ファー・革のコートや小物は殺生を連想させるため避けます。防寒のための黒タイツは60デニール以下の透け感があるタイプが目安です。
雨天・悪天候時の工夫
傘は黒・濃色の無地が無難。靴は滑りにくいソールのプレーンタイプを選び、到着後に汚れを拭き取ります。替えのストッキングやシンプルなサブバッグがあると便利です。
小物(バッグ・靴・アクセサリー・ヘアメイク)
小物は全身の印象を決める重要要素です。色は黒で統一し、光沢を抑えたシンプルなデザインを選びます。機能面では「必要最低限が入る」「歩きやすい」「音が出にくい」ことを意識しましょう。
香りやメイク、ネイルなど視覚・嗅覚に関わる要素も控えめに。場の空気を乱さない落ち着きが最優先です。
バッグの選び方
黒無地・小型・手提げが基本。布製またはマットな革で、金具やロゴの主張は最小限に。香典袋・数珠・ハンカチ・スマホが入る程度の容量が目安です。
- OK:黒無地の小型ハンドバッグ、黒の布サブバッグ
- NG:大きなブランドロゴ、派手な金具、紙袋での代用
靴の選び方
黒のプレーンパンプス(女性)・黒の紐付き革靴(男性)が基本。ヒールは3〜5cm程度、金具や装飾のないデザインにします。エナメルの強い光沢やサンダル・ブーツは避けましょう。
アクセサリー・ヘアメイク
結婚指輪のみ、またはパール一連まで。ダイヤ・ゴールド・二連パールは避けます。メイクは血色をわずかに補う程度、ネイルはクリアや落ち着いたトーンで。髪はまとめるか、顔にかからない控えめなスタイルに。
避けるべきNG服装
通夜は「駆けつける場」でも、カジュアルすぎる服装や派手さは不適切です。ビジネスの延長であっても、華美な色柄や光沢、露出の多さは控えます。迷ったら「地味・無地・黒寄せ」を徹底しましょう。
NGは単独では小さく見えても、積み重なると全体の印象を損ないます。色・素材・形・小物の4視点でセルフチェックを。
色・素材のNG
白・ベージュ・明るいグレーなど明度の高い色や、ラメ・エナメルなど強い光沢は避けます。アニマル柄やデニムなども不適切です。
形・デザインのNG
ノースリーブ・ミニ丈・深いスリット・オープントゥ・厚底など、露出やカジュアル度が高いものは控えます。過度なフリルやリボンも避けます。
小物・マナーのNG
大きなブランドロゴ、二連パールや宝石類、香りの強い香水、スマートウォッチの通知音、派手なネイルはNG。会場ではコートを脱ぎ、携帯はマナーモードへ。
迷ったときの判断早見表とQ&A
「手元にブラックフォーマルがない」「防寒をどう整える?」など、急な通夜で迷いがちなケースを簡潔に整理しました。状況と判断軸を照らし、最も失礼のない選択を取ります。
下表を参考に、手持ちのアイテムでフォーマル度を引き上げる工夫を加えてください。
状況 | 判断軸 | おすすめ対応 |
---|---|---|
ブラックフォーマルがない | 無地・濃色・光沢控えめ | 黒/濃紺/チャコールのスーツ+白シャツ(男)/濃色ワンピ(女) |
寒さが厳しい | 外観フォーマル維持 | 黒コートを入口で脱ぐ、黒タイツは60D以下の透け感まで |
足元が悪い(雨・雪) | 安全重視+清潔感回復 | 滑りにくい靴を選び、到着後に汚れ拭き取り・替えストッキング |
平服指定の案内 | 濃色・無地・控えめ | 黒に近い濃色を選び、ロゴ・装飾・柄は避ける |
ブラックスーツがないときは?
無地の濃紺・チャコールでも可。白シャツ・黒無地ネクタイ・黒靴でフォーマル度を補い、柄や光沢は避けます。
コートは会場でどうする?
入口で脱いで手に持つかクロークへ。毛皮・ファーは使用しません。屋外では着用可でも式場内では外すのが原則です。
タイツは何デニールまで?
基本は黒無地ストッキング(20〜40D目安)。冬の防寒でやむを得ない場合のみ、透け感のある黒タイツ60D以下を上限に。
まとめ
通夜の装いは「控えめ・無地・黒寄せ」を軸に、立場に応じたフォーマル度を調整するのが要点です。喪主・遺族は正喪服、一般参列者は準喪服〜略喪服の範囲で、装飾や光沢は抑えましょう。季節や天候への配慮はインナーや素材で調整し、見える部分はマナーを維持します。
急な知らせでも迷わないよう、ブラックフォーマル一式と小物(黒バッグ・黒パンプス/革靴・黒ストッキング/靴下・数珠)を揃えておくと安心です。判断に迷ったら「目立たない清潔感」を最優先に選べば大きく外れることはありません。
よくある質問(FAQ)
通夜の服装マナーについて、読者からよく寄せられる疑問にお答えします。迷ったときの最終確認としてご活用ください。
Q1. 通夜は喪服(正喪服)で行くべきですか?
喪主・遺族は正喪服(やむを得ない場合は準喪服)が基本です。一般参列者は準喪服(ブラックフォーマル)または略喪服(黒や濃紺・チャコールの無地スーツやワンピース)で問題ありません。
Q2. 「平服でお越しください」と案内があった場合の服装は?
「平服」はカジュアルではなく、通夜向けの略喪服を指すのが一般的です。黒に近い濃色・無地・光沢控えめを守り、ジーンズやスニーカーなどは避けましょう。
Q3. 女性はストッキングとタイツ、どちらが適切ですか?
基本は黒無地ストッキング(20〜40デニール目安)。冬の防寒でやむを得ない場合のみ、透け感のある黒タイツ60デニール以下までが目安です。
Q4. バッグはどのようなものを選べばよいですか?
黒無地・小型・手提げが基本。布製またはマットな革で、金具やブランドロゴの主張が少ないものを選びます。香典袋・数珠・ハンカチが入る程度の容量が目安です。
Q5. 靴やアクセサリーの注意点は?
靴は黒のプレーン(女性はパンプス3〜5cm目安、男性は紐付き革靴)。アクセサリーは基本不要、つけるならパール一連まで。エナメルやラメ、ダイヤ、二連パールは避けましょう。
Q6. 夏や冬など季節によって服装は変えたほうが良いですか?
夏は薄手のブラックフォーマル+黒ストッキング(15〜20D)。冬は黒や濃紺のコートを入口で脱ぎ、黒タイツは60D以下まで。毛皮・革素材のコートや小物は避けます。
Q7. ブランドのロゴ入りや大きな装飾がある服や小物はNGですか?
目立つロゴや装飾、強い光沢は避けます。全体として「控えめ・無地・黒寄せ」を守るのがマナーです。
Q8. 子どもや学生は何を着れば良いですか?
制服があれば制服(派手な校章・リボンは外す)。私服の場合は黒・紺・グレーの無地で統一し、靴はローファーなど落ち着いたものを選びます。