初盆と新盆の違いとは?準備や供養の流れを解説

「初盆(はつぼん)」と「新盆(にいぼん/しんぼん)」は、故人が亡くなって初めて迎えるお盆のことを指し、地域によって呼び方が異なります。いずれもご先祖・故人の霊をお迎えし、読経・お参り・会食などで追善供養を行う大切な節目です。

本記事では、初盆/新盆の違いと時期、準備の全体像、盆提灯や精霊棚の整え方、僧侶への依頼とお布施の目安、当日の流れ(迎え火〜送り火)、参列マナー、返礼品、予算モデルまでを実務目線で整理します。初めての方でも段取りしやすいチェックリスト・早見表つきです。

初盆と新盆の違い(用語・時期・地域差)

「初盆」と「新盆」は基本的に同じ意味で、故人の逝去後、最初に迎えるお盆を指します。関東などでは「新盆(にいぼん)」の呼称がよく使われ、西日本では「初盆」が一般的です。どちらの言い方を用いても失礼にはあたりません。

時期は多くの地域で8月13日〜16日(旧盆)ですが、東京の一部や地域によっては7月13日〜16日(新盆)で行うところもあります。菩提寺や地域の慣習に合わせ、日程の確認を最優先にしましょう。

用語の地域差と読み方

「初盆(はつぼん)」は全国的、「新盆(にいぼん/しんぼん)」は主に関東で使用されます。案内状や会話では、地域になじむ表記に統一すると混乱がありません。

呼び方 読み 主な地域 メモ
初盆 はつぼん 全国(特に西日本) 一般表記。白提灯を供える地域多数
新盆 にいぼん/しんぼん 関東・甲信など 「新盆見舞い」という表書きも見られる

日付の数え方と例外

逝去年の夏に初めて迎えるお盆が初盆/新盆です。ただし、葬儀からお盆までの期間が極端に短い場合や、地域慣習で翌年に繰り越す場合があります。判断は寺院・親族で相談して決めましょう。

準備の全体像(3〜4週間前から当日まで)

初盆/新盆は「日程の確定→僧侶依頼→会場と備品→案内→返礼品→当日運営」という流れで組み立てます。お墓参りと法要(棚経)を同日に行うか、自宅のみで行うかによって準備の濃淡が変わります。

特に盆前は寺院・仏壇店・ギフト店が繁忙になるため、早めの手配が肝心です。下表のスケジュールを目安に、家族の役割分担を決めて進めましょう。

時期 主な準備 ポイント
3〜4週間前 日程確認/僧侶依頼(棚経・法要)/参列者の範囲決め 寺院の巡回棚経の時間枠を最優先で確保
2〜3週間前 盆提灯・白提灯の手配/返礼品選定/案内状準備 名入れ提灯は納期に注意。数量は家単位で調整
1週間前 精霊棚の設営準備/供物・仏花の手配/進行表作成 席次・焼香順・会食有無を確定
前日〜当日 清掃・設営/供物・仏花/お布施・御車代・御膳料の用意 袱紗・封筒・挨拶文をセットで準備

準備チェックリスト

僧侶予定、提灯(白提灯・盆提灯)、精霊棚の道具、供花・供物、香典返し/返礼品、席次・焼香順、挨拶文、会食の有無、お布施・御車代・御膳料、掃除用具・来客用スリッパ等をリスト化して漏れを防ぎます。

盆提灯と白提灯の選び方

初盆では「白提灯」を用いる地域が多く、翌年以降は家紋や絵柄入りの「盆提灯(対提灯・回転行灯など)」を飾ります。白提灯は清浄を象徴し、初めて故人の霊を迎える目印とされます。地域によっては白提灯を玄関先に、屋内に絵柄提灯を飾るなど運用が分かれます。

サイズや本数は家のスペースや予算に応じて選択し、転倒防止のため安定台や吊り具を必ず確認します。電装タイプは配線の安全に注意し、ローソク使用時は不在点灯を避けます。

飾り方・片づけ・お焚き上げ

白提灯は初盆の時期が過ぎたら寺院でお焚き上げをお願いする地域が一般的です。盆提灯はお盆以外は箱に戻して保管し、来年以降も使用します(カビ防止に乾燥剤を同梱)。

種類 用途 目安台数 備考
白提灯 初盆の清浄の象徴 1本(家単位) 地域で室内/玄関前の違いあり
盆提灯(絵柄) 毎年のお迎えに 対(2本)推奨 家紋入り・回転灯など種類豊富

精霊棚(盆棚)の飾り方

精霊棚はご本尊・位牌の前に設ける小さな祭壇です。キュウリ・ナスの精霊馬、季節の果物、落雁、素麺、仏飯、茶湯、線香・ロウソク、仏花などを整えます。派手さより清潔さと適量が大切です。

棚布(真菰・白布)を敷き、中央に香炉、左右に花立・火立(五具足/三具足)を配置。供物は高坏に少量ずつ盛り、仏飯・水は毎日交換します。火気は在室中のみ使用し、LEDろうそくの併用も安全です。

お供えの基本

常温で傷みにくい菓子・果物を少量、仏飯は小盛り、茶湯は7〜8分目。生もの・強い匂いのものは控えめにします。お下がりは感謝して家族でいただき、傷みがあれば無理せず処分します。

  • 必須:香炉・花立・火立、仏飯器、茶湯器、高坏、線香・ロウソク
  • 推奨:真菰(または白布)、精霊馬、季節の果物・落雁、素麺
  • 安全:耐熱マット、転倒防止具、LEDろうそく

僧侶への依頼(棚経・初盆法要)

初盆期は僧侶が檀家を巡回する「棚経(たなぎょう)」を行う地域が多く、時間枠が限られます。早めに寺院へ連絡し、自宅読経か会場法要か、納骨や墓前読経の有無を含めて調整します。

志納は地域差がありますが、初盆法要(自宅読経)の目安としてお布施2万〜5万円前後、巡回棚経のみ5千〜1万円、御車代5千〜1万円、御膳料5千円前後がよく見られます。最終判断は寺院の案内に従ってください。

お布施・御車代・御膳料の準備

封筒は白無地(奉書)に黒墨で「御布施」「御車代」「御膳料」と別封で用意。式前後に控室で住職へ両手で手渡し、簡潔に名目を添えてお納めします。

当日の流れ(迎え火〜送り火の一例)

一般的なお盆の進行は、13日に迎え火・お迎え(読経/合掌)、期間中の礼拝・墓参、16日に送り火という流れです。初盆/新盆では、僧侶の読経(棚経)を自宅で受けたり、親族・近親者を招いて短い法要と会食を行う場合があります。

具体的な順序や所要は地域・寺院の運用で異なるため、案内を優先しつつ、来客導線と席次・焼香順を前日までに整えるとスムーズです。

時刻/場面 進行 ポイント
13日夕刻 迎え火・白提灯点灯・礼拝 火気安全・提灯の転倒防止
期間中 僧侶の棚経/墓参・掃除 焼香順・席次・駐車案内を用意
法要時 読経→焼香→法話→合掌→会食 お布施・御車代の手渡しは前後に
16日夕刻 送り火・点灯の終了・片づけ 提灯の保管/お焚き上げ手配

参列者対応と会食

会食は必須ではありません。実施する場合はアレルギー・年齢に配慮した軽食・折詰も選択肢です。人数確定と席次、返礼品配布の動線を整えましょう。

参列マナー(服装・香典・言葉)

服装は喪服ほど厳格でない場合もありますが、初盆/新盆では黒や濃紺・ダークグレーの準喪服(略礼装)が無難です。アクセサリーは控えめに、パール一連程度。靴・バッグは光沢を抑えます。

香典は「御仏前」「御佛前」を用いるのが一般的ですが、浄土真宗など宗派により表書きが異なる場合があります。地域では「新盆見舞い」の表書きを用いることも。金額は故人との関係や地域相場で判断します。

表書きと金額目安

親族:1万〜2万円、近親・友人:5千〜1万円、近隣:3千〜5千円が目安。表書きは「御仏前」「新盆御見舞」等、地域・宗派の案内を優先します。

  • 服装:ダークフォーマル(男性:黒スーツ・黒ネクタイ/女性:黒ワンピ・黒ストッキング)
  • 持ち物:数珠・袱紗・ハンカチ・香典袋・折詰(必要時)
  • 言葉:明るすぎる言い回し・過度な慰めは避け、簡潔に「本日はお参りさせていただきます」など

返礼品と挨拶状(お礼の整え方)

参列・ご香典・お見舞いへのお礼として、タオル・洗剤・菓子などの日用品や食品ギフトが選ばれます。相場は頂いた金額の1/3〜半返しを目安に、地域に合わせて調整します。遠方者には後日郵送も可です。

挨拶状は簡潔に、初盆/新盆の供養が無事済んだ旨とお礼を記し、世話役・参列者へ送付します。会食辞退者や不参加の方にもお礼の意を伝えると丁寧です。

宛名と文例のポイント

連名や家族宛の場合は世帯主名に加え、必要に応じてご家族名も併記。故人の戒名/法名や命日、法要日付の表記は和暦/西暦を統一します。

地域・宗派の違い(運用と配慮)

同じ宗派でも本山・地域で運用差があり、提灯や精霊棚の飾り方、読経の有無、焼香回数などに違いが見られます。判断に迷う点は、菩提寺・葬儀社に率直に相談するのが最も確実です。

浄土真宗では提灯・精霊棚の扱いが簡素化されることがあり、読経やお念仏中心の法要となる場合もあります。神式・キリスト教ではお盆と異なる追悼の行事が行われます。

神式・キリスト教の相当行事

神式は祖霊祭・みたままつり、キリスト教は追悼ミサ・記念礼拝などが行われます。表書きや服装マナーが異なるため、各宗教施設の案内に従いましょう。

予算の組み方(モデルケース)

初盆/新盆は「法要の有無」「会食の有無」「提灯の種類」で費用が変わります。下表は一例です。相場は地域差が大きいため、あくまで目安としてお使いください。

※お布施・御車代・御膳料は寺院の方針を最優先に。返礼品は参加人数と相手の負担感を考慮して調整します。

費目 目安金額 備考
お布施(自宅法要) 2万〜5万円 棚経のみは5千〜1万円の場合も
御車代 5千〜1万円 距離・移動回数で加減
御膳料 5千円前後 会食辞退時のみ
白提灯 3千〜1.5万円 名入れ・電装で上下
盆提灯(対) 1万〜5万円 家紋入り・回転灯は上振れ
供物・仏花 3千〜1万円 季節と人数に合わせる
返礼品 1,000〜3,000円/人 半返しは地域差あり

まとめ

初盆/新盆は、故人を最初にお迎えする大切な供養の節目です。日程と地域慣習を確認し、白提灯・精霊棚・供物を清潔に整え、僧侶依頼と参列者対応を早めに段取りすれば、落ち着いて当日を迎えられます。

迷ったら「寺院の指示>地域慣習>ネット情報」の順で判断し、〈清潔・適量・簡素〉を合言葉に。無理のない形で心を込めることが、もっとも確かな供養につながります。

よくある質問(FAQ)

初盆/新盆の用語差・時期・白提灯と盆提灯・僧侶依頼・お布施/御車代・香典表書き・服装・返礼・遠方対応・精霊棚・迎え火/送り火・宗派差など、実務で迷いやすい点をQ&Aで整理しました。最終判断は菩提寺(依頼寺院)と地域慣習を優先してください。

Q1. 「初盆」と「新盆」の違いはありますか?

意味は同じで、故人が亡くなって初めて迎えるお盆です。関東は「新盆(にいぼん/しんぼん)」、西日本は「初盆」と呼ぶ傾向があります。どちらの表記でも失礼には当たりません。

Q2. 7月盆と8月盆、どちらが正しい?

地域で異なります。東京の一部などは7月13〜16日、多くの地域は8月13〜16日に行います。まずは菩提寺・自治会・霊園の案内を確認しましょう。

Q3. 逝去直後にお盆が来た場合、その年が初盆になりますか?

地域や寺院の方針で異なります。その年を初盆とする地域もあれば、準備期間が短いなどの理由で翌年に繰り越す地域もあります。寺院に確認して判断してください。

Q4. 初盆は白提灯が必要?何本用意しますか?

多くの地域で初盆は白提灯を1本(家単位)用います。翌年以降は絵柄入りの盆提灯(対提灯)に切り替えるのが一般的です。飾り方・設置場所は地域差があるため寺院の指示に従いましょう。

Q5. 白提灯は終わったらどう処分する?

初盆の時期が過ぎたら、寺院でお焚き上げをお願いする地域が多いです。独自に廃棄せず、事前に引き取り可否や方法を確認しましょう。

Q6. 僧侶へのお布施・御車代・御膳料の目安は?

自宅での初盆法要:お布施2万〜5万円、巡回棚経のみ:5千〜1万円、御車代:5千〜1万円、御膳料:5千円前後が目安です(地域差あり)。必ず寺院の案内を優先してください。

Q7. 参列時の香典の表書きは「御仏前」で良い?金額相場は?

一般的には「御仏前」(地域によって「新盆御見舞」も)。金額目安は、親族:1万〜2万円、親しい友人・近親:5千〜1万円、近隣:3千〜5千円。宗派・地域の慣習があればそちらを優先します。

Q8. 服装は喪服ですか?平服でも良い?

初盆/新盆は準喪服(略礼装)が無難です(黒・濃紺・ダークグレー)。宗派や家の方針で平服指定の場合もありますが、華美・光沢は避け、アクセサリーはパール一連程度に留めましょう。

Q9. 会食は必須?用意できない場合はどうする?

必須ではありません。簡素な折詰や返礼品で対応しても問題ありません。僧侶が会食辞退の場合は御膳料を別封で用意します。

Q10. 遠方で参列できません。供養はどうすれば?

当日の時間に合わせて自宅で焼香・合掌し、供花・供物・お布施(志)や弔電・メッセージを送る方法があります。後日お墓参りも立派な供養です。

Q11. 精霊棚(盆棚)に何を供える?置き方は?

香炉・花立・火立(五具足/三具足)、仏飯、茶湯、果物・落雁、素麺、精霊馬(きゅうり・なす)などを清潔・適量で。中央に香炉、左右に花と灯、供物は高坏に少量で整えます。

Q12. 迎え火・送り火は必ずする?屋内での代替は?

地域行事として行う所が多いですが、屋内で白提灯の点灯と合掌で代替するご家庭もあります。火気は安全を最優先に、LEDろうそくの併用も有効です。

Q13. 浄土真宗など宗派でやり方は違いますか?

あります。提灯や精霊棚の簡素化、念仏中心など宗派差が見られます。寺院の方針が最優先のため、不明点は率直に相談しましょう。

Q14. 返礼品や挨拶状は必須?相場は?

必須ではありませんが、参列や香典へのお礼として用意することが多いです。相場は頂いた額の1/3〜半返し。挨拶状は供養が無事済んだ旨とお礼を簡潔に記します。

Q15. 準備はいつから始めれば良い?

目安は3〜4週間前から。僧侶の予定確保→提灯・返礼品の手配→精霊棚・供物→進行表の順で進め、前日までに会場整えと封筒(お布施・御車代・御膳料)を準備します。



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