通夜と告別式はどちらも「故人を偲ぶ儀式」ですが、目的や雰囲気、参加者、服装のフォーマル度、所要時間などに明確な違いがあります。初めて参列する方は、どの場面で何をするのか、香典や挨拶の作法は同じで良いのか不安になりがちです。
本記事では、通夜と告別式の違いを一覧で整理し、両者に共通するマナーと、それぞれ特有のポイントを具体的に解説します。受付から焼香、通夜振る舞い、退席時の一言例まで、現場でそのまま使える実務的ガイドです。
通夜と告別式の基本(目的と位置づけ)
通夜は、もともと「夜通し故人を見守る」ことに由来し、近しい人が静かに集まり、読経と焼香を中心に故人を偲ぶ場です。現代では1〜2時間程度に区切って執り行われ、参列は業務後の短時間でも歓迎されます。喪家からの「通夜振る舞い(軽い会食)」が案内されることもありますが、参加は任意です。
告別式は、故人との最終の別れを社会的に行う「本儀」にあたり、式の厳粛さやフォーマル度が高くなります。通夜より参列者が限定される傾向があり、読経・焼香・弔辞・弔電披露・出棺と続くのが一般的な流れです。会場の指示に従い、私語や撮影は厳に慎みましょう。
通夜とは(概要)
夕刻〜夜に開式し、読経・焼香を中心に短時間で弔意を表す場。仕事帰りの弔問のみでも失礼には当たりません。
告別式とは(概要)
翌日昼間に行われる本儀。弔辞や弔電披露、出棺を含み、時間・服装・所作のフォーマル度が高いのが特徴です。
通夜と告別式の主な違い(一覧)
違いを把握すると、服装・持ち物・時間配分・言葉遣いが自然と整います。迷ったら「通夜は短時間で静かに」「告別式は厳粛に丁寧に」を合言葉にすると失敗が減ります。
下表は目的・参加者・服装・所要時間などの違いをまとめたものです。会場・宗派・地域による例外もあるため、最終的には案内に従ってください。
項目 | 通夜 | 告別式 |
---|---|---|
目的 | 近しい人で故人を見守り冥福を祈る | 社会的な最終の別れを執り行う本儀 |
時間帯 | 夕刻〜夜 | 午前〜昼過ぎ |
所要時間 | 30〜60分+通夜振る舞い(任意) | 1〜2時間+出棺・火葬へ続く |
参加者 | 親族・友人・会社関係など幅広い | 親族中心、会社関係は代表者が多い |
服装 | 準喪服(黒基調・無地・マット) | 正喪服(格式が上がる) |
香典 | 通夜で1回渡せば翌日は不要 | 通夜欠席時のみ持参するのが一般的 |
挨拶 | 短く一言で十分 | より簡潔・厳粛に、弔辞は指名のみ |
飲食 | 通夜振る舞いが案内されることあり | 会食は原則なし(精進落としは別途) |
違いを理解するメリット
場の目的を把握できると、服装や言葉選び、滞在時間の判断が容易になり、喪家にも配慮のある参列ができます。
スケジュールの流れ(典型例)
会場や宗派で前後は入れ替わりますが、全体像を掴んでおくと当日の不安が軽減します。下の表は一般的な時系列の一例です。
通夜は開始10〜15分前に到着、告別式は15〜20分前到着が安心。読経中の入退室は避け、係の指示に従いましょう。
時系列 | 通夜 | 告別式 |
---|---|---|
受付 | 香典を渡し記帳→着席 | (通夜欠席者のみ香典)記帳→着席 |
式次第 | 僧侶入場→読経→焼香→喪主挨拶 | 読経→弔辞・弔電披露→焼香→喪主挨拶 |
その後 | 通夜振る舞い(任意) | 出棺→火葬(同行は案内に従う) |
地域・宗派による差
焼香回数や言葉遣い、弔辞の有無などは宗派・地域で異なります。会場のアナウンスを最優先に、独自判断を避けましょう。
参列マナーの基本(共通)
通夜・告別式いずれも「静か・簡潔・中立表現」が基本です。香りの強い整髪料・香水は避け、スマホはアラーム含め完全サイレントに設定します。
声量は控えめに、相手の正面で身振り手振りを大きくしないこと。写真撮影やSNS投稿は原則として行わず、必要時も喪家の許可が前提です。
- 到着は10〜20分前、読経中の入退室は避ける
- 受付では名乗り→香典→記帳→会釈→着席
- 焼香は喪主・親族→参列者の順、回数は案内に従う
- 退席は区切りで静かに、一礼を添える
受付〜着席の所作
袱紗から香典袋を静かに出し、両手で差し出します。着席後は荷物を足元に置き、私語を慎みます。
焼香・合掌の基本
焼香台の手前で一礼→抹香→(額へ)→香炉へ→合掌→一礼。回数は1〜3回が多いですが、会場の案内を最優先に。
退席時の一言
「本日は誠にご愁傷さまでございました。どうぞご自愛ください。」と短く。長話や励ましの強要は避けます。
通夜に参列するときのポイント
通夜では、短時間で弔意と労いを伝えることを重視します。仕事帰りでも服装が黒基調・無地・マットであれば差し支えないことが多く、アクセサリーはパール一連までが無難です。
「通夜振る舞い」は任意参加。事情があれば丁寧に辞退して構いません。辞退の際は「本日はお時間を頂戴しありがとうございました。所用があり失礼いたします。」と一言添えましょう。
- 到着は開式10〜15分前を目安に
- 香典は通夜で1回渡せば翌日は不要
- 通夜振る舞いは参加任意、辞退は短く丁寧に
時間帯・服装の目安
夜の参列でも黒基調・無地・光沢控えめが基本。コートは入口で外し、会場内では持つか腕に掛けます。
声掛け例(受付・焼香後)
「このたびはご愁傷さまでございます。心よりお悔やみ申し上げます。」と簡潔に伝え、会釈で退きます。
通夜振る舞いの辞退例
「お気遣いありがとうございます。所用により本日は失礼いたします。改めてご冥福をお祈り申し上げます。」
告別式に参列するときのポイント
告別式はフォーマル度が高く、所作もより厳粛に。写真撮影や大きな挨拶は避け、係の指示に静かに従います。弔辞は喪家から正式に依頼された方のみが述べます。
出棺時は混雑しやすいため、列を乱さず、案内があるまでその場で静かに見送ります。花入れ(別れ花)の有無・順番は会場の案内に従いましょう。
- フォーマル度は通夜より高い(正喪服推奨)
- 弔辞は指名者のみ、その他は一礼で十分
- 出棺・火葬同行の可否は案内に従う
開式前後の所作
席に着いたら会話は最小限に。読経中は起立・合掌の合図に従い、姿勢を正します。
弔辞を頼まれたら
2〜3分・600〜800字程度を目安に、故人への感謝と別れを簡潔に。宗教観の押し付けや原因詮索は避けます。
出棺後の動き
会場や係の誘導に従い、混雑を避けて退場。会食(精進落とし)の案内がない場合はそのまま解散します。
香典相場と表書きの違い
香典は通夜か告別式のどちらかで1回渡せば十分です。通夜で渡した場合、翌日は記帳のみで問題ありません。欠席した場合は告別式で持参し、受付で静かに渡します。
表書きは宗派・地域で異なります。仏式は「御霊前」が一般的ですが、浄土真宗では「御仏前」を用いることが多い点に注意してください。宗教不明なら「御香典」が無難です。
関係性 | 通夜/告別式の相場目安 | 表書き(仏式の一例) |
---|---|---|
親・子 | 3万円〜 | 御霊前(浄土真宗は御仏前) |
兄弟姉妹 | 1万〜3万円 | 同上 |
親戚 | 1万〜2万円 | 同上 |
友人・知人 | 5千〜1万円 | 御霊前/御香典 |
会社関係 | 5千〜1万円(個人) | 御霊前/御香典 |
表書きの使い分け
仏式:御霊前(浄土真宗は御仏前)/宗教不明:御香典。キリスト教は「御花料」、神式は「御玉串料」を用います。
金額の考え方
地域相場・関係性・年齢を加味して決めます。奇数額を好む地域もありますが、会場の慣例に従いましょう。
服装マナー(男女・子ども)
通夜は準喪服、告別式は正喪服が基本ですが、いずれも「黒・無地・マット・装飾最小」が共通原則です。光沢の強い素材や大きなロゴ、派手なアクセサリーは避けましょう。
バッグ・靴・ベルトなどの小物も黒で統一し、金具の光沢と音が目立たないものを選ぶと安心です。香りの強い香水・柔軟剤も控えます。
項目 | 通夜(準喪服) | 告別式(正喪服) |
---|---|---|
男性 | 黒スーツ+白シャツ+黒ネクタイ | モーニングや略礼服(地域差あり) |
女性 | 黒ワンピース/スーツ+黒ストッキング | 正喪服(アンサンブル)+装飾最小 |
子ども | 制服/黒・紺・グレーの落ち着いた服 | 同左(派手色・キャラ物は避ける) |
男性のポイント
黒無地スーツ・白無地シャツ・黒無地ネクタイ・黒靴下・黒内羽根靴が基本。ベルトは光沢控えめに。
女性のポイント
膝下丈ワンピース/スーツ・黒パンプス(3〜5cm)・小粒パール一連まで。網タイツ・光沢素材は避けます。
子ども・学生のポイント
制服があれば制服で可。ない場合は黒・紺・グレーで統一し、ロゴや装飾を避けます。
参列できない場合のマナー
やむを得ず参列できない場合は、弔電や香典の郵送(現金書留)で弔意を伝えます。会場や喪家の方針を優先し、供花・供物は事前確認のうえで手配しましょう。
オンラインのメッセージで済ませるのではなく、可能であれば後日あらためてお悔やみの手紙を送ると丁寧です。SNSでの訃報共有は原則避けます。
- 弔電:式場宛てに開式前必着が理想
- 香典:現金書留で香典袋を封入、手紙を添える
- 供花・供物:会場規定と札書きを確認
弔電・香典郵送の文例
「ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。出席できず誠に失礼いたします。心より安らかなお眠りをお祈りいたします。」
オンライン弔意の注意
家族の了承が明確でない限りSNS投稿は控えます。やむを得ず連絡が必要な場合も、個別かつ簡潔に。
まとめ
通夜は「短時間で静かに」、告別式は「厳粛に丁寧に」。この意識だけで所作・言葉・服装が自然と整います。迷ったら会場係に小声で確認し、独自判断は避けるのが安心です。
出発前チェック:①案内状・会場名・開始時刻 ②香典袋(中袋記入)+袱紗 ③数珠・ハンカチ・黒ペン ④黒基調の服装(光沢控えめ) ⑤スマホ完全サイレント ⑥通夜振る舞いの参加可否(辞退の一言)
よくある質問(FAQ)
通夜と告別式の違い・服装・香典・到着時刻・焼香回数・通夜振る舞い・遅刻や弔電など、迷いやすいポイントをQ&Aで簡潔にまとめました。最終判断は案内状・会場係・喪家の方針を優先してください。
Q1. 通夜と告別式、どちらに参列すべき?両方必要?
どちらか一方で構いません。一般参列は通夜のみが多く、近親者・ごく近い関係は両方参列する傾向です。会社関係は通夜を優先するケースが一般的です。
Q2. 到着の目安は?遅刻しそうな場合は?
通夜は10〜15分前、告別式は15〜20分前到着が目安。遅れる場合は読経中の入室を避け、区切りで静かに着席します。
Q3. 香典は通夜と告別式で2回必要?
原則1回で十分です。通夜で渡したら、翌日は記帳のみで問題ありません。通夜を欠席した場合は告別式で持参します。
Q4. 表書きは「御霊前」「御仏前」「御香典」のどれ?
仏式は一般に「御霊前」、浄土真宗は「御仏前」が多く、宗教不明なら「御香典」が無難です。キリスト教は「御花料」、神式は「御玉串料」。
Q5. 焼香の回数や作法がわかりません。
会場の案内・僧侶の指示に従うのが最優先。目安は1〜3回で、前の方の所作を参考に静かに続きます。
Q6. 服装の違いは?仕事帰りでも大丈夫?
通夜は準喪服(黒基調・無地・光沢控えめ)、告別式は正喪服が基本。仕事帰りでも黒基調で整えれば通夜は多くの場合問題ありません。
Q7. 通夜振る舞いは必ず参加すべき?断り方は?
任意です。辞退する場合は「お気遣いありがとうございます。本日は所用により失礼いたします。」と感謝→辞退→一礼で短く伝えます。
Q8. 写真撮影やSNS投稿はしてよい?
原則控えます。必要があっても喪家の許可が前提で、フラッシュや音は厳禁。位置情報や個人特定の投稿は避けます。
Q9. 参列できない時はどう弔意を伝える?
弔電・供花(会場可否要確認)・香典の現金書留郵送で。香典は香典袋を封入し、お悔やみの手紙を添えると丁寧です。
Q10. 子ども・高齢者同伴は可能?配慮点は?
同伴可です。出入口近くの席を選び、体調最優先・短時間運用を心がけます。必要に応じて途中退席を。
Q11. 名刺交換や長い挨拶は必要?
不要です。挨拶は短く・静かに。ビジネス目的の会話や名刺交換は場にそぐわないため避けます。
Q12. 手ぶら参列でも大丈夫?数珠を忘れたら?
香典・袱紗・数珠が基本ですが、数珠を忘れた場合は合掌のみで問題ありません。荷物は最小限にまとめましょう。