僧侶へのお車代と御膳料|渡し方と封筒の書き方

通夜や葬儀、各種法要では、読経への感謝を表す「お布施」とは別に、移動やお食事への配慮として「お車代」「御膳料」を用意するのが一般的です。ただ、金額や封筒の書き方、渡すタイミングは地域や寺院の運用で差があり、初めての方は戸惑いがちです。

この記事では、お車代・御膳料の意味と相場、決め方の実務、封筒と表書き、渡し方の所作、複数僧侶の配分、会食辞退時の対応、会計管理までを整理。迷いがちなポイントを表とチェックリストでわかりやすく解説します。

お車代・御膳料とは(意味と位置づけ)

「お車代」は、僧侶の移動に要した交通費や時間への配慮を示す心付けです。距離や所要時間、当日の移動回数(斎場⇄火葬場⇄墓地 など)によって増減を考えます。領収書の有無は寺院の方針次第で、原則として対価の支払いではなく「志」として別封で用意します。

「御膳料」は、会食に同席なさらない(辞退される)場合にお食事代相当をお包みする心付けです。会食にご同席の場合は基本的に不要ですが、長時間の奉仕や移動が重なるなど事情により配慮することもあります。どちらもお布施とは区別して準備し、表書きと渡し方を丁寧に整えることが大切です。

お布施との違い(早見)

お布施=読経・法要への感謝の志/お車代=移動配慮/御膳料=会食辞退時の配慮。いずれも金額の正解は一つではなく、寺院方針と地域慣習の範囲で整えます。

名目 趣旨 封筒の表書き 相場目安 備考
お布施 読経・法要への感謝 御布施 規模で幅(例:数万〜) 水引不要が一般
お車代 交通費・移動時間への配慮 御車代 5千〜2万円程度 距離・回数で加減
御膳料 会食辞退時のお食事相当 御膳料 5千〜1万円程度 同席時は不要が基本

相場の目安と決め方

相場は地域と寺院方針で幅がありますが、お車代は5千〜2万円、御膳料は5千〜1万円がよく用いられるレンジです。徒歩圏・敷地内移動のみなら控えめ、市内移動やタクシー使用、納骨同行・複数会場移動では手厚くするのが目安です。

金額決定は「寺院の考え方の確認 → 家族合意 → 個別封筒の準備 → 当日の渡し方を一本化」という順で固めるとスムーズです。切りの良い金額に整え、硬貨は避け、黒墨で記入します。

金額に影響する主な要素

距離、移動回数、時間帯(早朝・夜間)、所要時間、僧侶の人数(導師+脇導師)、納骨同行の有無、タクシー利用想定、天候などが代表的な決定要素です。

状況 お車代の目安 御膳料の目安 補足
同一施設内(移動ほぼ無し) 5千円前後 会食辞退時 5千円前後 短時間・徒歩圏
市内移動あり/タクシー使用 5千〜1万円 5千〜1万円 往復タクシー想定で加減
納骨同行・複数会場移動 1万〜2万円 5千〜1万円 移動時間・距離に配慮

封筒・表書き・墨色(水引の要否)

封筒は白無地または奉書紙が基本で、水引は不要が一般的です(地域により双銀・黄白水引を用いる場合あり。迷ったら寺院に合わせる)。表書きはそれぞれ「御車代」「御膳料」、下段に施主(喪主)名を記します。筆記は黒墨を用い、香典袋の流用は避けます。

中袋(または裏面)には住所・氏名・金額(大字)を記入します。複数封筒がある場合は、お布施・御車代・御膳料を別封にし、重ねる順番を当日わかるようメモしておくと渡し間違いを防げます。

表書きサンプル(用途別)

下の表記例をそのまま用いて問題ありませんが、寺院で推奨表記がある場合はそれに従いましょう。

用途 上段の表書き 下段 備考
お車代 御車代 施主名(例:◯◯家/◯◯ ◯◯) 水引不要が一般
御膳料 御膳料 同上 会食辞退時のみ
お布施(参考) 御布施 同上 名目を混在させない

中袋の書き方・大字の例

金額は大字(例:壱・弐・参・伍・拾・百・阡(仟)・萬・圓)で記入すると改ざん防止になります。住所・氏名も忘れずに。中袋がない無地封筒の場合は裏面下部に記しましょう。

渡すタイミングと手順(通夜・葬儀・法要)

原則として式の前後に控室で、僧侶(住職)または寺務の方へ両手でお渡しします。参列者の前や式進行中の授受は避け、袱紗(ふくさ)から出して相手側に表書きが向くように差し出します。複数封筒がある場合はまとめて帯封やクリップで留めず、重ねを整えて手短に内容を添えます。

タイミングの目安は、通夜:読経前後、葬儀:開式前または出棺後、法要:開式前です。納骨同行がある日は出発前にお車代をお渡しすると動線がスムーズです。

言い添えの例(そのまま使える一言)

「本日はご導師ありがとうございます。お布施と、移動の御車代・御膳料でございます。どうぞお納めください。」のように、簡潔に名目を添えると誤解が生じにくく安心です。

  • 通夜:「本日はお越しくださりありがとうございます。こちら、お布施と御車代でございます。」
  • 葬儀:「出棺までのご案内ありがとうございます。お布施に加え、納骨同行の御車代も併せてお納めいたします。」
  • 法要:「本日の年忌法要、よろしくお願いいたします。こちら御布施と、会食辞退とのことで御膳料でございます。」

役割分担と複数僧侶への配分

導師と脇導師(応援僧侶)がいる場合、原則として各寺院・各僧侶に別封で用意します。配分は導師を厚めに、脇導師は半額〜3分の1程度が目安ですが、寺院側で「まとめてお渡しください」という運用もあるため、事前に確認しておきましょう。

手渡し担当は喪主または会計係が担い、誰に何を渡したかを記録します。受付預かりにする場合は、同封メモに「名目・枚数・総額・渡し先」を明記し、預かった担当者名と時刻を控えます。

応援僧侶・兼務寺院のとき

本寺と兼務寺院の僧侶が加わる場合、原則は寺院ごとに別包。わからない場合は「導師に一括でお預けし、配分は寺院にお任せする」運用でも失礼に当たりません。

会食辞退・差し入れ・折詰の扱い

御膳料は会食に同席されない場合の配慮として用意します。折詰やお弁当をお渡しする場合、御膳料は省略しても構いませんが、長時間のご奉仕や移動がある日には、折詰+心付け(少額)など柔軟に配慮しても良いでしょう。

食物アレルギーや宗派上の配慮が必要な場合もあるため、葬儀社や寺院に事前相談し、無理のない形で整えるのが安心です。

御膳料と折詰の併用可否

どちらか一方で十分ですが、地域や家の慣習で併用する例もあります。重複にならないよう、家族内の合意を先に固めておきましょう。

会計・管理の実務(記録・領収の扱い)

お布施・お車代・御膳料は名目別に封筒と記録を分けるのが基本です。授受の時刻・相手・金額・封筒数をメモに残し、香典や返礼品費と混在させないよう管理します。領収書は宗教上の性格から発行しない運用が多いため、必要なら事前に相談して受取書や御礼状形式で対応いただけるか確認します。

当日混乱を避けるため、封筒の重ね順と渡す順序をメモし、袱紗・筆ペン・予備の白封筒を準備。急な僧侶交代や人数増にも慌てず対応できます。

ミス防止チェックリスト

前日までに以下を確認しておくと安心です。

  • 寺院へ:移動有無・納骨同行の有無・会食の出欠を確認
  • 金額:家族合意のレンジ内で決定(切りの良い額)
  • 封筒:御布施/御車代/御膳料を別封・黒墨・下段に施主名
  • 当日動線:渡す場所(控室)・タイミング(開式前/出棺後)
  • 記録:渡し先・時刻・枚数・総額をメモ。受付預かり時は担当名も

ケース別の注意点(タクシー・遠方・納骨同行)

タクシー利用が想定される悪天候や夜間は、お車代をやや手厚く整えます。遠方からの来臨や前泊が必要な場合は、寺院側から具体的な要望があることもあるため、早めの相談が肝心です。納骨同行がある日は、道中の所要時間に配慮して事前手渡しがスムーズです。

いずれのケースでも「寺院の方針>地域慣習>ネット情報」の優先順位を守り、迷ったら率直に確認しましょう。丁寧な事前連絡が、当日の安心とトラブル回避につながります。

タクシー利用が前提のとき

市内移動往復の想定で5千〜1万円を目安に。深夜・早朝・長距離は上積みを検討します。

遠方からの来臨や前泊が必要なとき

寺院の方針を最優先に、必要経費の考え方を事前に共有。無理のない範囲で配慮します。

納骨同行がある複数会場移動

斎場→火葬場→霊園のように移動が多い日は、出発前にお車代を渡すと会計が滞りません。

まとめ

お車代と御膳料は、移動とお食事への配慮を形にする心付けです。金額は状況により幅があり、最優先は寺院の方針。用途ごとに別封で用意し、黒墨の表書きと落ち着いた所作で、式の前後に控室でお渡しすれば失礼がありません。

当日は「準備(封筒・金額・順序)」「確認(動線・相手)」「記録(授受メモ)」の3点を整えておけば安心です。迷ったら早めに相談し、静かに・簡潔に・丁寧に進めましょう。

よくある質問(FAQ)

お車代・御膳料の金額、封筒や表書き、水引や墨色、渡すタイミング、複数僧侶の配分、受付預かり、会食辞退時の扱い、領収書・振込対応など、実務で迷いやすい点をQ&Aで整理しました。最終判断は菩提寺(依頼寺院)と会場運営の指示を優先してください。

Q1. お車代と御膳料は必ず必要ですか?

地域や寺院の運用によります。一般的にはお布施とは別に用意しますが、会食にご同席いただく場合は御膳料を省略することもあります。事前に寺院へ確認しましょう。

Q2. 金額の目安はどれくらい?

お車代は5千〜2万円、御膳料は5千〜1万円がよく用いられるレンジです。距離・移動回数・時間帯・納骨同行の有無で加減します。

Q3. 封筒は香典袋でも良い?水引は必要?

香典袋の流用は避け、白無地(または奉書)に黒墨で表書きが基本。水引は不要が一般的ですが、地域で双銀・黄白を用いる運用もあります。寺院方針に合わせてください。

Q4. 表書きと書き方は?墨色は薄墨?

上段は「御車代」「御膳料」、下段は施主名を黒墨で記します。薄墨は用いません。裏面や中袋に住所・氏名・金額(大字)を記入します。

Q5. 渡すタイミングはいつ?式中でも良い?

式の前後に控室で僧侶(住職)または寺務の方へ。式中や参列者の前での授受は避けましょう。通夜は読経前後、葬儀は開式前または出棺後、法要は開式前が目安です。

Q6. 複数の僧侶が来られる場合、配分はどうする?

原則は各僧侶(または各寺院)に別封。導師を厚めに、脇導師は半額〜3分の1程度が目安です。まとめ渡しを指定される場合は指示に従いましょう。

Q7. 会食に同席いただいたのに御膳料も必要?

同席いただいた場合は通常不要です。長時間の奉仕や移動など事情により、折詰+少額の心付けで配慮することもあります。

Q8. 受付に預けても大丈夫?

基本は直接手渡し。ただし運営上受付預かりにする場合は、名目・枚数・総額のメモを同封し、預かった担当者名と時刻を控えます。

Q9. 新札はNG?お札の向きに決まりは?

お布施同様、新札でも差し支えありません。肖像が表側・上向きになるよう揃え、折れや汚れのない紙幣を用意しましょう。

Q10. 領収書はもらえますか?振込は可能?

宗教上の性格から領収書を発行しない運用が多いです。必要な場合は事前に相談し、受取書や御礼状で対応いただけるか確認を。振込可否も寺院に確認しましょう。

Q11. タクシーや遠方移動のときの金額は?

市内タクシー往復想定で5千〜1万円、遠方・長時間・夜間は上積みを検討。納骨同行や複数会場移動時は手厚くします。

Q12. 言い添えの言葉はどうすれば?

「本日はご導師ありがとうございます。こちら、お布施と移動の御車代(会食辞退の御膳料)でございます。どうぞお納めください。」と簡潔に名目を添えて手渡しすると丁寧です。



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